ろ違った物質となっているものだという見地《けんち》から、この名案が考え出されたのです。
 しかし科学は矢張り臍まがりで、この方法はまだ実用に遠く、金には成るには成るが、顕微鏡で探さねばならぬ程ですから、費用仆《ひようだお》れで金にはならない。……だが油断は出来ませんぞ。最近になって人造《じんぞう》宇宙線の研究が俄《にわ》かに盛んになりましたが、この研究が進むといよいよこの人造宇宙線を使って、水銀を金に化《か》することが他愛《たわい》もなく出来るようになりそうな気がします。勿論そうなったからといって悦《よろこ》ぶのは早い。金が簡単に出来るようになったら、今日一|匁《もんめ》十何円|也《なり》という金が、一匁一銭也位になるでしょうから、いくら金がドンドン手に入っても仕方がないでしょう。まあそのときは、鼻紙に金でもって頭文字《イニシャル》でも入れることですネ。
 宇宙線の人造ということも面白い問題ですが、その宇宙線と並んで現代で人気のあるのは超短波《ちょうたんぱ》でしょう。
 超短波というと電波の一種で、波長がたいへん短い。一メートルから十メートル位の間のものです。ラジオ放送に使っているのは
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