ちゃいかん。ところでレッド、被害者として何か申立たいことはないか」
「へえ、ありがとうごぜえやす。あっしを殺したこのヤーロの奴を、ウンと罰してやっておくんなさい。終り」
「それだけだナ。よし決まった。判決。ヤーロはレッドを殺害したる罪により、金五万円也の罰金に処す。但し二十日以内に納付《のうふ》すべし」
「えッ五万円を二十日間に……。そりゃひどい。月賦《げっぷ》にしておくんなさい。毎度のことじゃありませんか」
「駄目だ、毎度のことじゃから……。閉廷《へいてい》!」
 捜査課長は、木の槌《つち》で卓《たく》の上をコツンと叩いた。加害者と被害者とは睨《にら》み合ったまま、室《へや》を出ていった。
 課長は手をのばして、葉巻を一本口へ抛《ほう》りこんだ。そして思わず独白《ひとりごと》した。
「外科が進歩するのも良《よ》し悪《あ》しだ。バラバラ屍体も二、三十分のうちに、元のピンピンした身体に縫いあげられる世の中では、殺人罪が流行《はや》りすぎてイカン」
 そのとき扉が開いて、警官が顔の色を変えて入って来た。
「課長、大変です。本庁の前で殺人です!」
「ホイ、また流行ったか」
「レッドがヤーロを
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