茶を一ぱい飲んでからのことだ」
 紅茶に角砂糖を四つ抛《ほう》りこんだのを、さも美味《おいし》そうに飲み終ってから課長は調べ室の方へトコトコ歩いていった。
「では調べを始めるとしよう。被害者の用意は、もういいナ」
「はい、出来ています。連れて参りましょうか」
「まだいいよ。加害者のヤーロが先だ。ここへ引立ててこい」
 チェリーを一|服《ぷく》喫《す》っているところへ、ヤーロ親分が留置場《りゅうちじょう》から連れられてきた。
「課長さん。早速《さっそく》ですが自白《じはく》しますよ。レッドの奴をバラバラにしたなア、このあっし[#「あっし」に傍点]でサ。刑罰はどの位ですか」
「そんなことは、まだ云えない。それよりもお前は何故レッドを殺害したのか」
「ナーニね。あいつの面《つら》がどうにも気に喰《く》わねえんでサ。むしゃくしゃとして、やっちゃいました。それだけのことです」
「よオし。では次に被害者を呼べ。レッドを呼ぶのだ」
 ヤーロはそれを聞くと椅子から立ち上った。警官は畏《かしこ》まって、隣室から被害者レッドを連れてきた。
「やッ、ヤーロ奴《め》、ここにいたな」
「こらッ、静まれ、喧嘩をし
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