査事件なんですが、もちろん絶対秘密を守っていただかねばなりません。御存知かもしれませんが、実は今有力なる反政府団体があって、大活躍を始めています。この秘密団体の本部は上海《シャンハイ》あたりにあると見え、その本部から毎日のごとく情報や指令が来ますが、その通信は秘密方式の無線電信であって、もちろん暗号を使っています。ですから普通の、受信機で受けようとしても、秘密方式だから、普通の受信機では入らない。その上、符号は暗号だから、たとえコピーが見つかってもその内容が解けない。こういう風に二重の秘密|防禦《ぼうぎょ》を試みています。お解りですかな」
 帆村は黙って肯《うなず》いた。そんなことは先刻承知している。
 木村事務官は語をついで、
「これは秘密ですから、どうかお間違いのないように。ところで問題は、その暗号解読の鍵なんです。それがどうも分らない」首をひねり、「送ってくる暗号文は六|桁《けた》の数字式です。つまり、123456 といったような六桁の数字が、AとかBとかいう文字を示しているのです。ところがその六桁の数字は、そのままではいくら解いてみても分らない。つまりその暗号法では鍵《キイ》と
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