なる別の六桁の数字があって、それを加えあわせてある。たとえばその鍵の数字が 330022 だったとすると、暗号文のどの数字にもこれが加えてある。だからAが 123456 であらわされるにしても、123456 として送っては来ないで、鍵の数字 330022 を加えた結果、すなわち 453478 として送ってくる。だからこの 453478 のままでは、途中で誰かが読んでもまるで本当の暗号 123456 を想起することができない。このように暗号には、鍵の数字というやつが大切なのですが――いや、お釈迦《しゃか》さまに説法のようで恐縮ですが――これがまた厄介なことに、一ヶ月ごとにひょいひょいと変る。今月 330022 だったとすると、来月の一日からは 787878 という風にがらりと変ってしまう。こうなると解読係はまったく泣かされてしまいます」
といって木村氏は、茶をのんだ。
料亭の人は二人の前に茶菓をおいたまま行ってしまった。こっちで呼ぶまで決して来ない、いいつけであった。
「解読係も腕達者を揃えてありますが、六桁の暗号数字から、鍵の数字を見つけるのになかなか骨が折れます。苦心の末やっと見
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