の表を凝視《ぎょうし》していた彼は、思わず、
「うむ」
 と、呻って目をみはった。
 彼は畳の上をとんとんと激しく叩《たた》いた。
 隣室に待っていた栗山刑事が、とぶようにして入ってきた。
「帆村さん、どうしました」
「おお、栗山さん。今日東京へ飛ぶ旅客機に間にあいませんか」
「えっ、旅客機ですか、こうっと、あれは午後一時四十分ですから、あと四十分のちです。それをどうするんです」
「僕は大至急東京へ帰らねばなりません」
「そんな身体で、大丈夫ですか」
「いや、大丈夫。謎が解けそうです。すぐ帰らねばなりません。どうか飛行場へ連れていって下さい」
 親切な栗山刑事は、帆村の身体を抱えるようにして旅客機の中へおくりこんだ。
 午後一時四十分、ユニバーサル機は東京へ向けて出発した。
 帆村は青い顔を窓から出して、見送りの栗山刑事へ手をふった。そしてほっと溜息をついた。
 とうとう四日間というものを欺《だま》されとおしてきたのだ。
 帆村の心は穏《おだや》かでない。
 割り算の鍵《キイ》は一体どうなったのか。
 鍵は解けないともいえるし、解けたともいえた。なぜなら予期した六桁の数は遂に分らないの
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