だ。分らないように出来ているのだ。なぜなら答が二つも出るのである。
問題は答の二桁目のXだ。これは5か9かのどっちかというところまで進んでいたが、今となっては、5でもよければ9でも差支《さしつか》えないことが分った。つまり答は二つだ。
Xが5であれば、求める六桁の被除数は 638897 となる。またXが9であれば、668857 となる。暗号の鍵の数字に、二つの答があってよいものか。ぜひとも一つでなければならない。そこにおいて帆村は万事を悟《さと》ったのだ。
「うぬ、一杯喰わされた」
彼ははじめて夢から覚めたように思った。なぜ彼は欺されたのか。彼の敵は、帆村をどうしようと思っていたのか。すべては謎であった。それを解くには、一刻も早く東京へかえるより外ないと気がついたのである。
どうやら東京には、彼の想像を超越した一大変事が待ちかまえているようである。一体それは何であろうか。
帆村の羽田空港に下りたのは午後四時だった。彼は早速電話をもって、木村事務官を呼び出した。
ところが意外にも、内務省では、木村事務官なぞという者は居ないと答えた。いくど押し問答をしても、居ない者は居ないとい
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