の矢を放ったが、事務官はその説明を拒絶した。そしてこんなことを云った。
「それを説明すると、私どもの役所が使っている重要な情報網の秘密を洩らすことになりますから勘弁してください。しかしこれは十分|信憑《しんぴょう》すべきものであることを断言します。この□□□□□□は、来月の暗号の鍵数字であること疑いないのですが、肝腎の数字が入っていません。これは次の※[#丸2、1−13−2]という場所、つまり銀座の帝都百貨店洋酒部にあるスコッチ・ウィスキーの広告をさがして、その裏を見て考えるよりほかないのですが、この仕事を貴下にお願いしたいのです。私どもがやってもやれなくないかもしれませんが、たびたび申すとおりに、それではすぐ彼等の方に分ってしまいます。そこは貴下を煩《わずら》わした方が、巧みにカムフラージュにもなるし、またお手際も私どもより遥かに美事《みごと》であろうと思うのです。どうか一つそのような事情をば御考慮の上、直ちに活動をはじめていただきたい。しかも絶対秘密です。それからもう一つ、お気の毒ですが、今日は二十六日で、あと五日で来月となります。ですからこの調査は、即時とりかかっていただきたい。
前へ 次へ
全43ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング