あやあ。迎えに来てくださるという話のあったのは、貴女《あなた》がたでしたか。ネリーも意地悪だなあ。だって、お婆さんが二三人迎えに出るかもしれないといったんですよ。はははは、まさかこんなに花のようにうつくしいお嬢さん方にとりまかれようとは思わなかったなあ。ネリーのいたずらにうまうま一杯ひっかかったんだ。はははは」
「ネリーなら、やりそうなことですわ。ところでどちらが二俵伯爵《にひょうはくしゃく》で、どちらが六升男爵《ろくしょうだんしゃく》でいらっしゃいますの」
 二俵伯爵に六升男爵? 私は、娘たちがからかっているのだとばかり思っていた。
「それは一目見ればわかるでしょう。余《よ》がすなわち噂に高き二俵伯爵であり、こっちの黙りこんで昼間の梟《ふくろう》のように至極《しごく》温和《おとな》しいのが、六升男爵でいらせられる」
 白木が、とんでもないことをいいだした。私は、あきれてしまって、うしろから彼の腕をゆすぶったが、それが通じるどころか、彼は身ぶりたっぷりで、お嬢さんたちの機嫌をとりむすぶのに夢中である。
「……ええ、そういうわけで、メントール侯とは、ずいぶん昔から深い御交際をねがっている
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