暗号音盤事件
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)暫《しばら》くの間
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)小|卓子《テーブル》の上に
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国際都市
私たちは、暫《しばら》くの間リスボンに滞在することになった。
私の連《つ》れというのは、例の有名な勇猛密偵《ゆうもうみってい》の白木豹二《しらきひょうじ》のことだ。
リスボンは、ポルトガルの首都だ。そのころリスボンは、欧州に於ける唯一《ゆいい》つの国際都市の観があった。この国は英米側に立つのでもなく、日本、ドイツ、イタリヤの枢軸国側《すうじくこくがわ》に加わっているのでもなく、完全な中立国であった。だから、リスボンの町は、いわゆる呉越同舟《ごえつどうしゅう》というやつで、ドイツ人やイタリヤ人が闊歩《かっぽ》しているその向うから、イギリス人やアメリカ人や、それからソ連人までが、安心し切った顔で、ぶらぶらこっちへ歩いて来てはすれちがうという珍風景が、至るところで見られた。
だから私たちも、ここにいる間は別に中国人やベトナム人を装《よそお》う必要なく、わたし達は、日本
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