かったけれど、白木の奮戦《ふんせん》に護《まも》られながら、これをくりかえしていくうちに、私は遂《つい》に凱歌《がいか》をあげたのであった。「海を越えて」の音盤!
その音盤をかけながら、音叉をぴーんと弾くと、音楽以外に顕著《けんちょ》な信号音が、或る間隔《かんかく》をもって、かーんと飛び出してくるのであった。音叉を停めれば、それは消え、音叉をかければ、その音盤が廻っているかぎり、かーんかーんという音は響く。これこそ、時限《じげん》暗号というもので、音と音との間隔が、暗号数字になっているのであった。私は白木の傍へとんでいって、手短《てみじ》かにこれを報告した。
「そうか、遂に発見されたか。うん、そいつは素晴らしい。それでこそ、日本人の名をあげることが出来るぞ。じゃそれを持って、早速《さっそく》ずらかろう」
「大丈夫か、外から狙っている奴等の包囲陣《ほういじん》を突破することは……」
「なあに、突破しようと思えば、いつでも突破できるのだ。只、君が仕事の終るのを待っていただけだ。かねて逃げ路の研究もしておいたから、安心しろ」
私は白木のことばを聞いて、大安心をした。そして早速《さっそく》
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