であった。それから私は、また次へうつった。
 それは丁度《ちょうど》八枚目をかけているとき、とつぜん外で銃声を耳にした。と、それにかぶせて、若い女の悲鳴が起った。
「おい、なんだ。どうしたのか」
 私は白木の方をふりかえった。白木は窓のところに立ち、カーテンの蔭から、例のステッキに似せた軽機銃の銃口《じゅうこう》を窓外《そうがい》にさし向けたまま、石のように硬くなっていた。
「こっちを射撃しやがった。だが命中せずだ。例のげじげじ牧師に案内されて来た曲者《くせもの》一行の暴行だ」
 といっているとき、またもや銃声が二三発鳴ったと思ったら、窓|硝子《ガラス》が鋭い音をたてて壊れて下に落ちていった。
「おい、暗号は見つかったか」
 白木は、相変《あいかわ》らず石のように硬い姿勢を崩さないで、私にきいた。
「まだだよ。もう少しだ。じゃ外の方は頼んだぞ」
 私はそう叫んで、あと二枚の音盤の調べにかかった。「ローレライ」に「ケンタッキー・ホーム」に「セレナーデ」に……と調べていったが、私は大きな失望にぶつかった。期待していた最後の二枚にも、遂に何の異状もなかった。暗号らしいものの隠されている徴候《
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