せいこく》イギリスの息の根を徹底的に止めちまうことについて、なんだ。かの三国同盟の精神の故であるは勿論のこと、我々日本の当面の敵としてだ。ところで、その徹底的――いいか徹底的だぞ、徹底的に息の根を止めるには、われわれが出馬《しゅつば》しないと、どうしても駄目なんだ。だから今夜出発だ。どうだ分ったろう」
 白木の話は、何を指しているか、さっぱり分らなかった。何か曰《いわ》くのあることらしいとは感づいたが、それを根掘り葉掘り聞くとなると、白木が今夜のような態度のときには、きっと変にからまってしまうのが例だった。日本を放れてはるばるこんなところへ来ている二人組の間に、気拙《きまず》いことが起るぐらい面白くなく、そして淋しいことはないので、こういう時には、結局ワキ役である私の方で気をきかせて譲歩し、彼の我儘《わがまま》を認めてやる事にしている。
「よかろう、もうその位で……。八時出発は分ったが、目的地は何処かね。服装の準備のこともあるからね」というと、白木は案外だという顔付で、私を見直《みなお》して、にこにこしながら、
「ああそうだった、目的地をまだ云わなかったが、ゼルシー島だよ。ジブラルタル
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