お嬢さん方の中で、一等|健脚《けんきゃく》な一団が、私たちの視界の中までのぼってきた。
 それは五人ばかりの一団だった。
 先登《せんとう》に駈《か》けあがって来た娘の顔を見て、私の心臓は少し動悸をうった。それはバーバラという非常に日本人に近い顔立ちの娘で、昨日から私の目について、望郷病《ぼうきょうびょう》らしいものを感じさせられたのであった。
「ずいぶん、足が早いのね」
 と、バーバラは、他の四人をずんと抜いて、私たちの間に入ってきたが、そのときあたりを憚《はばか》るような小声《こごえ》で、
「これは内緒《ないしょ》よ。気をつけないといけないわ。この村のげじげじ牧師のネッソンが、見慣《みな》れない七八人の荒くれ男を案内して、下から登ってくるわ。あたし望遠鏡で、それを見つけたのよ」
「やあ、お嬢さん、それはありがとう。で、そのネッソンという奴は、荒くれ男を使って、どんな悪いことをするのかね」白木の顔が、ちょっと硬《かた》くなった。
「これまでに、あのげじげじ牧師の手で、密告されて殺されたスパイが、もう五十何名とやらにのぼっているのよ」
「へえ、そうかね。私たちは、スパイじゃないから安心
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