酒類を用意させて、お伴《とも》について来させる。その上に、例の溌剌たるお嬢さんがたを全部、招待して、まるで、移動する花園の中に在《あ》る想《おも》いありと、側《はた》から見る者をして歎《たん》ぜしめたのであった。これくらいにやらなければ城塞の番人は、こっちに対して気を許すまいと思われたからであった。
 わが一行は、坂道をのぼっていった。
 陽はつよく反射して、咽喉《のど》が乾いてこたえられなかった。わが一行は、方々で小憩《しょうけい》をとった。そのたびにレモナーデだ、ハイボールだなどと、念の入ったことになる。だから、私たちが城塞の下についたころには、私たち二人を除《のぞ》いたあとの一行全部は、後遅《おく》れてしまったのであった。
「おい白木、これじゃしようがないじゃないか」
 と、私がいえば、白木はにやりと笑って、
「いや、これでいいんだよ。皆を待つふりをして、城塞を外からゆっくり拝見といこうではないか」
 と、彼は、太いステッキをあげて、爆弾に崩《くず》れた石垣のあたりを指すのであった。
「例の宝物は、どこにあるのか、君は見当がついているのかね」
「さあ、よくは分らないが、何としても
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