塞にあることは確実だというが、なぜ分る?」
「これは、ドイツの諜報機関《ちょうほうきかん》の責任ある報告で、フリッツ将軍のサインまでついているから間違いなしだと思っていい。実は、メントール侯は、既にドイツの第五列のため捕えられ、あの程度のことまでは白状したんだそうだ。しかし、それから奥のことについては、侯は一切口を緘《つぐ》んで語らないので、ドイツ側じゃ、業《ごう》を煮《に》やしているらしい。この島へも、ドイツ側は上陸して、なるべく人目にたたないように城塞へ入り込み、いろいろ調べもしたが、ついに宝探しは徒労《とろう》に終ったんだそうだ。それにこの島は今のところ、民主国側へも枢軸国側へもはっきり色を示していない国際島《こくさいとう》なんだから、行動をとるにしても、万事非常にやりにくいんだ。そうでなければ、あの鼻息の荒い連中が、われわれの前へ頭を下げてくる筈《はず》がない」
白木のことばによって、私には、だんだん事情が明《あきら》かになってきた。そして、これは今までにない重大任務だと思った。
「じゃあ、いつからあの城塞へ入り込むつもりかね」
と、私が訊《き》くと、白木はどうしたわけか、
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