海中に沈めたり、重要書類を沢山の潜水艦に積んで、無人島にある秘密の根拠地に避難させたり、移動用の強力な無線電信局を擬装《ぎそう》の帆船《はんせん》に据《す》えつけたりしてさ、一旦は本土を喪うとも、やがて又|勢《いきおい》をもりかえして、ドイツ軍を圧迫し、本土奪還《ほんどだっかん》を企《くわだ》てようとし、そのときに役立つようにと、本土の外の重要地点において用意|万端《ばんたん》を整《ととの》えておいたというわけだ。今われわれの関係している暗号の鍵というのも、その本土の外に保管されてある重要機密の一つなのさ。その時号の鍵が、このゼルシー島の、しかもメントール侯の城塞内に隠されていることは、極《きわ》めて確実なのさ。それをわれわれの手でもって探し出そうというのだ」
 白木は、今になって、すこぶる興味ある話を、べらべらと喋《しゃべ》り出すのであった。このへんは、大体のところ彼の横着《おうちゃく》から来ているのであるが、又一つには、初手から私を無駄に心配させまいとしての友情が交っていることも確かだった。だから、白木に対し、正面から抗議を申込むわけにもいかない筋合《すじあい》があった。
「あの城
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