い。白木のやつは、どうやらドイツ軍人たちに、この暗号の鍵は、われわれの手によらなければ永久に発見できないであろうといったような見得《みえ》を切って来たものらしい。どっちにしても私は雲を掴むような仕事に、大汗をかかねばならなくなったのである。
私が当惑《とうわく》しきっているのにはお構《かま》いなしに、白木はボーイにいいつけ、持って来させた銀の盆の上の酒壜《さけびん》を眺め、にたにたと笑いながら、
「おい、まだここには、こんな素晴らしい逸品《いっぴん》があるんだぜ。どうだ、陣中見舞《じんちゅうみまい》として、一杯いこう」
と、コップをとって私にすすめる。
私は酒の入ったコップをそのまま小|卓子《テーブル》の上に置いて、
「おい白木、宝探しの暗号の鍵とはどんなものか、もっと詳しいことを聞かせろ」
というと、白木は、急いでコップの酒をぐっと呑んで、
「もう別に、附け加えるような新しい説明もないよ。要《よう》するに、イギリス政府は、こうなる以前に、早くも本土を喪《うしな》うことを勘定にいれて、金貨の入った樽《たる》を方々の島や海底に隠したり、艦船用の燃料|貯蔵槽《ちょぞうそう》を方々の
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