ね」
 碇が、たまりかねて声をかけた。
「兄貴、黙っていてくんねえ」
 叱られた。
「なるほど。こんなに時間がかかるようじゃ、探偵を泊りがけで追払わなければならないわけだ」
 碇は、退屈のあまり机の引出をあけたり、本を一冊ずつ手に取って開いたりした。
 戸棚から、先日彼の失った鞄を見つけたときは、はっと緊張したが、中をあけてみると肝腎《かんじん》の重要書類がない。何のことだ。やっぱり金庫の中か。
 四時間二十分という途方もない長時間の記録を樹《た》てて、午前三時に、遂に大金庫は開いた。
「やれ、あいたか」
「あとは首領にやって頂きます」
 三名人は精根を使い果してそこへしゃがんでしまった。
 替って烏啼と碇とが前へ出て、金庫の中を覗きこんだ。
「あッ、あれだ」
「うん、やっぱりここに入れてあった。あけられるとは知らず、馬鹿な猫々だ」
「動くな、撃つぞ。機関銃弾が好きな奴は動いてもよろしい」
 大喝《たいかつ》した者がある。突然うしろで……
「しずかに手をあげてもらいましょう。これは皆さん。ようこそ御来邸下すった……」
 五名の賊は、双手《もろて》を高くあげてうしろをふりかえった。機銃を
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