底本では「底」と誤植]《てい》の颯爽《さっそう》たる首領ぶりだった。
「中へ踏み込む人員は、おれと碇と、それから豹太、沙朗、八万の五名だ。あとの者は、手筈《てはず》に従って外に散らばって油断なく見張っていろ」
中へ踏みこむことを指名された部下たちは得意満面、にやりと笑った。
表と裏とから二手に分れて入った。烏啼の眼の前には戸締りなんか無いも同然だ。
「ばあやをひっくくって、押入の中へ入れちまいました、そのほかに誰も居りません」
「そうか。じゃあ金庫部屋へ踏みこめ」
袋猫々の書斎に、その秘密金庫はあった。見事な壁掛をはずすと、その下に金庫の扉が見えていた。
しかしこれが仲々明かないのであった。
烏啼は金庫破りの三名人の豹太、沙朗、八万に命じて、この仕事に掛からせた。
だがさすがの名人たちも、一時間たち、二時間たったがどうすることも出来なかった。
「爆破しますか」
碇健二が、しびれを切らせていった。
「そういう不作法なことは、おれは嫌《き》れえだ。あくまで錠前を外して開くんだ」
烏啼は頑として彼特有の我を通す。
三時間、三時間半……三名人の顔に疲労の色が浮かぶ。
「まだか
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