あそこで、こっちはそろそろ仕事にかかろう」
烏啼は盃を下におくと、のっそり立上って、碇健二をはじめ部下に目くばせした。
一門の出陣であった。
自動車の中で、碇健二が烏啼天駆に話しかけた。
「あの袋猫々は、暗号文をちゃんと解いたようですね」
「原の町駅行きの切符を買ったところを見ると、暗号文が解けたんだな、そうだろう、探偵商売だから、それ位のことはやれるさ」
「あの暗号文をこしらえた須田は、それを袋探偵が解く力があるだろうかと心配していたですよ」
「須田よりは、猫々の方がちっと上だよ」
「しかし袋猫々も、まさか自分が旅行に出た留守に、自分の巣を荒されるとは気がついていないでしょうね」
「汽車に乗ってごっとんごっとんと東京を離れていったところをみると、気がついていないようだ」
「あとでおどろくでしょうな。折角手に入れた烏啼の重要書類が、自分の留守になくなっていたんではね」
「しかし、うまく行きゃいいが……袋猫々の金庫は厳重なことで、玄人の間にゃ有名だからな」
烏啼はいつになく心配顔で元気がない。
しかし自動車が袋邸の近くで停り、さっと下りたときの烏啼は、鬼神もさける体[#「体」は
前へ
次へ
全25ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング