烏啼天駆シリーズ・4 暗号の役割
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)烏啼天駆《うていてんく》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)探偵|袋猫々《ふくろびょうびょう》
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   暗闇の中の声


 奇賊|烏啼天駆《うていてんく》と探偵|袋猫々《ふくろびょうびょう》の睨《にら》み合いも久しいものである。
 この勝負は一向かたづかないままに、秋を送り、この冬を迎えた。
 ところがここに袋探偵は、一つの手柄をたてた。いや幸運を掴んだといった方がいいかも知れない。というのは、今から三日前の夜、虎ノ門公園地内でのだんまり一幕。
 かれ猫々は、その夜すっかり酔っぱらってあそこを通りかかったが、どうにも身体が思うようにならず、そこでしばらく時間をやり過ごすことにして、ふらふらと足を踏みこんだのがあの公園。亭のあるところまで行きつかないうちに力が抜けてしまい、どんと尻餅をついてそのままと相成ったのが、入口から入ったすぐのところの八《や》つ手《で》の葉かげ。
 そこですっかり身体が安定してしまって、ぐっすり睡込んだ。――と思ったら、たち
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