まち夢を破られた。何者とも知れず、十歩位でとんで行けそうなすぐ傍で左右に分れて睨みあったる二組の人影。それがあたりを憚《はばか》りつつ凄文句《すごもんく》を叩きつけ合う。時々声高になって言葉に火花が散るとき、かれ袋探偵の酔払った耳底に、その文句の一節が切れ切れにとびこむ……
水鉛鉱のすばらしい鉱山が見つかった。
その仮称《かしょう》お多福山《たふくやま》の場所は秘密だ。
おぬしだけが知っているんだ。
とんでもない。
金山源介は殺された――お多福山の宝を見つけて、見本の原鉱を掘りだした男………
殺したのはおぬしだ。
うそだ。でたらめだ。
烏啼の身内と分ったからにゃ、話はお断りだ。
そんなことはいわない方がいいだろうぜ。笹山鬼二郎、おぬしは悪人だ、卑怯者だ。
儲《もうけ》けは山分けだ。
いやだ。
おぬしの大将に何もかもぶちあけて、大将にかけ合う。
まあ、待て。
おぬしは源介から横どりした秘密地図を持っているんだ。それを今、半分に破いてこっちへ寄越せ。
ちょッ、悪い者に見こまれたよ。じゃあ今出して、それを半分にするから……ちょっと待っていて下さいよ。
その
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