に彼自身は金と同じように気が変になり、女たちも薬を断《た》たれて、一勢に中毒者としてその筋に発見されるに至ったのだった。中でもチェリーの中毒症状は殆んど致命的《ちめいてき》だと診断を下《くだ》された。しかし一体誰が、丘田医師のところからヘロインを盗み出したのだ。丘田医師はかねてヘロインを手にしてからというものは、パントポンの代りに、この粗製品を使って世間を胡魔化《ごまか》していたことは、帆村の調査によって証拠だてられたところだ。――実をいうと、帆村はこのことについて何も云わないのであるが、丘田医師のところへ検《しら》べに行った夜、ゴールデン・バットの傍《そば》の橋の上から、なにか白い紙包を川中に投じたが、あれが丘田医師のところにあったヘロインではあるまいかと、私は考えている。あの高い棚の上にあった銀玉《ぎんだま》はきっと真中から二つに割れるボンボン入れのようなものであったろう。
海原力三《うなばらりきぞう》は無罪となり、放免された。
しかし丘田医師は、あの夜から、どこへ逃げたものか、行方不明である。――しかし後日談を云うと、あれから三ヶ月ほどして、帆村は大阪の天王寺《てんのうじ》の
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