へ敬礼をすると、懐中電灯を出して、傷の部分を診察した。
「これは何か鈍器《どんき》でやられたもののようですネ。余程重い鈍器ですナ、頭の方よりも、左肩が随分ひどくやられていますよ。骨がボロボロに砕けています」
「そうでしょう」と帆村は応《こた》えてから、指を側へ向けた。「そこに凶器がありますよ」
「どれです」医師は目をあげた。
「ほら、これですよ」と帆村は二三歩あるいて、床の上に転《ころが》っている一つの大きい毯《まり》のようなものを指した。「外側は御覧のとおり毛糸で編んであります。しかしこれは単なる袋ですよ。中身は鉄の砲丸です、あの競技に使うのと同じですが、非常に重いです。こっちから御覧になると、血の附いているのが見えますよ」
帆村は横の方から凶器の一部を指し示した。
「これは頭部からの出血が染ったのですナ」と医師は云った。
「そうらしいですネ。ときに丘田さん。この死者の致命傷は、やはりこの外傷によるものでしょうか」
「無論それに違いがありませんが、何か御意見でも……」
「意見というほどのものではありませんが、この死者の身体を見ますと、普通の人には見られない特異性があるように思うんで
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