ず何遍でもやり直して、とうとうぼくを穴の中に圧し込んでしまったのである。
ぼくは暫《しばら》く呆然《ぼうぜん》となっていた。
喜んでいいのか、それとも悲しんでいいのか。
自分のあさましい身の上が分ると、ぼくはもう初めに考えていたように、大きなりっぱな機械に抱《いだ》かれることをすっかり断念しなければならなかった。今の今まで、断念していたのである。
ところが思いがけなく、ぼくは憧《あこが》れの国際放送機の中に取付けられてしまったのである。こんなうれしいことが又とあろうか。
ぼくを、こうした思いがけないすばらしい幸運へなげこんでくれたこの若い男に対し、どんなに感謝しても感謝し足りないと思った。
だが、ぼくの心の隅に、何だかおり[#「おり」に傍点]のようなものが溜《たま》っていることについて、ぼくはいささか気にしないわけにいかなかった。というのは、ぼくは公然堂々《こうぜんどうどう》と大手をふってこの大役にとびこんだわけではなかったのである。
早くいえば、その若い男が、くだらない話に夢中になっているお蔭で、こんなことになったのである。それは決して公明正大であるとはいえない。身は一
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