もくねじ
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)倉庫《そうこ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)数十日|経《た》って、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おり[#「おり」に傍点]のようなものが
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   倉庫《そうこ》


 ぼくほど不幸なものが、またと世の中にあろうか。
 そんなことをいい出すと、ぜいたくなことをいうなと叱《しか》られそうである。しかし本当にぼくくらい不幸なものはないのである。
 ぼくをちょいと見た者は、どこを押せばそんな嘆《なげ》きの音《ね》が出るのかと怪《あや》しむだろう。身体はぴかぴか黄金色《おうごんいろ》に光って、たいへんうつくしい。小さい子供なら、ぼくを金《きん》だと思うだろう。ぼくをよく知っている工場の人たちなら、それがたいへん質のいい真鍮《しんちゅう》であることを一目でいいあてる。実際ぼくの身体はぴかぴか光ってうつくしいのである。
 ぼくは、或る工場に誕生すると、同じような形の仲間たちと一緒に、一つの函《はこ》の中に詰めこまれ、しばらく暗《くら》がりの生活をしなければ
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