ならなかった。その間ぼくは、うとうとと睡《ねむ》りつづけた。まだ出来たばかりで、身体の方々が痛い。それがなおるまで、ぼくは睡りつづけたのである。
 それから数十日|経《た》って、ぼくは久しぶりに明るみへ出た。
 そこは、倉庫の中であった。でっぷり肥《こ》えた中年の人間が――倉庫係のおじさんだ――ぼくたちのぎっしり詰《つ》まっているボール函《ばこ》を手にとって、蓋《ふた》を明けたのだ。
「お前のいうのはこれだろう。ほら、ちゃんとあるじゃないか」というと、別の若い男がぼくたちを覗《のぞ》きこんで、
「あれえ、本当だ。もう一函もないと思っていたがなあ。どこかまちがって棚《たな》の隅《すみ》へ突込んであったんだねえ。きっと、そうだよ。つまり売れ残り品だ」
 といいながら、指を函の中に突込《つっこ》んで、ぼくたちをかきまわした。ぼくはしばらく運動しなかったので、彼《か》の若い男の指でがらがらとかきまわされるのが、たいへんいい気持ちだった。
「売れ残り品じゃ、役に立たないのか」
 中年の男が、腹を立てたような声を出した。
「いやいや、そんなことはない。掘り出しものだよ。ありがたいありがたい。これで
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