にいつまでも震《ふる》えながら、歎《なげ》き悲しんでいた。
そのうちに、ぼくはとつぜんむずと摘《つま》みあげられた。ぼくは愕《おどろ》いた。はっとして目を瞠《みは》ると、知らない若い男の指に摘みあげられていた。
その若い男は、もう一人の男と、しきりにあまりよくないところの話に夢中になっていた。
「よせよ、大きなこえを出すない。木田さんに聞かれたら、怒られるよ」
「大丈夫だい。木田さんは呼ばれて主任のところへ行っちまった。おい、どうする。行くか、行かないか」
「おれはいやだよ」
「ばか。いくじなし」
そういいながら、その若い男は、ぼくを穴の中へ挿《さ》し込《こ》んだ。私はこの意外な出来事に、夢かとばかり愕《おどろ》き、そして胸を躍らせた。木田さんが向うへいった留守に、何にもしらないこの若い男が、ぼくをよく調べもしないで、装置の穴の中に挿し込んでしまったのである。やがてぼくの頭に、ドライバーが当てられた、ぐっと圧《お》されて、きりきりと右へ廻された。ドライバーは、何遍《なんべん》かつるりと滑《すべ》った。そのたびにやり直しだ。
だがその若い男は、話に夢中になっていたので、文句も云わ
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