だ。だからこっちとこっちとが、よけいに深く削《けず》られている。これじゃねじ山は合っていても細いから、挿《さ》し込《こ》んでもやがてぬけてしまうよ。おお、それに頭がこんなに缺《か》けているじゃないか。ドライバーをあてがって、力をいれてねじ込もうとすれば、ドライバーがねじの頭から滑ってしまう。ひどいものを交《ま》ぜて寄越《よこ》したなあ。とにかくこれはだめだ」
そういって、彼はぼくを元のとおり、機械台の上に、頭を下にして立てた。
ぼくの不幸なる身の上は、この刹那《せつな》にはっきりしたのである。
螺旋がよけいに深く切り込んである。それに頭の一部が缺けている。ああぼくは何という不幸な身体に生まれついたことであろうか。
目の前が急に暗くなった。ぼくは台の上で身体をふるわせ、歎き悲しんだ。折角《せっかく》りっぱな国際放送機の部分品となって、大東亜戦争|完遂《かんすい》に蔭ながら一役を勤めることが出来ると思ったのに。
若《も》しぼくに、羽根があったら、この台の上からひらりと飛び出して、あの穴へとびこむのだが……。
幸運《こううん》
すっかり希望を失ったぼくは、機械台の上
前へ
次へ
全18ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング