手で、既《すで》にアルミの小さい枠の装置のフレームの穴とぴったり合わせていた。右手の指に摘みあげられたぼくが、その穴に今や挿《さ》しこまれようとした瞬間、
「おやァ」と、木田さんの異様な声がした。
「何だい、このもくねじは……。これは出来損《できそこな》いじゃないか。なぜこんなものが入っていたんだろう。誰かぼやぼやしてやがる」そういって木田さんは、ぼくを機械台の上に立てた。ぼくはどきんとした。
「何を怒っているんだい、木田さん」
横合《よこあい》から、疳高《かんだか》い声が聞えた。
「いや、優級品のもくねじだから安心していたんだ。ところがこんな出来損いのが交っていやがる。見掛けは綺麗なんだけれど、螺旋《らせん》の切込み方が滅茶苦茶《めちゃくちゃ》だ。どうしてこんなものが出来たのかなあ」
「どれどれ」
と、疳高《かんだか》い声の男が、ぼくを指先につまみあげて、眼のそばへ持っていった。熱い息が、下からぼくを吹きあげる。
「なるほど、これはふしぎなもくねじだね。たしかに出来損いだ。それにしても、よくまあこんなものが出来たもんだ。これはあれだよ。旋盤《せんばん》の中心が何かの拍子に狂ったの
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