てしまった。そこは所内の通路の上で、雨ふりの日のために、舗装道路《ほそうどうろ》になっていた。ぼくは赤面《せきめん》した。もう何も考えまい。
ぼくは目をつぶって死んだようになっていた。が、最後にりっぱな人に拾い上げられた。それはこの放送所の所長さんであった。どうしてこの小さいぼくが見付かったんであろうか。所長さんは、日向《ひなた》に立《た》ち留《どま》って、ぼくを摘《つま》みあげ、つくづくと見ていた。
「やれやれ可哀想に、このもくねじは……。生まれながらの出来損《できそこな》いじゃな。ここへ捨てられるまでは、さぞ悲しい目に会ったことじゃろう。おい、もくねじさん。お前はこのままじゃ、どうにもうだつ[#「うだつ」に傍点]が上らないよ。だからもう一度生れ変ってくることだね。真鍮《しんちゅう》の屑金《くずがね》として、もう一度|製錬所《せいれんじょ》へ帰って坩堝《るつぼ》の中でお仲間と一緒に身体を熔《と》かすのだよ。そしてこの次は、りっぱなもくねじになって生れておいで」
所長さんのやさしい言葉に、ぼくは胸がつまって、泣けて泣けて仕方《しかた》がなかった。さすがに技術で苦労した所長さんだ。ぼ
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