界《きょうかい》に顛落《てんらく》することは、始めから分り切っていたのである。間違った幸福をよろこんでいたぼくは、何というばかだったろうか。
或る日、このごみ捨て場に、舎宅《しゃたく》の子供たちが三四人で遊びに来た。汚いところだが、子供たちには、たいへん興味のある遊び場であるらしい。子供たちは、みんな女の子であった。ごみの山の上を、上《あが》ったり下《お》りたりして遊んでいるうちに、一人の鼻たらしの七つ位の子供が、ふとぼくを見つけて、小さな掌《てのひら》の上へ拾い上げた。
「いいものがあったわ。これは、きたないけれど、ねじ釘《くぎ》でしょう。お家へ持ってかえって、お母さんにあげるわ。額《がく》をかけるのに釘が欲しいってお母さんいっていたのよ」
ぼくは、その子供の小さい手に握られていた。そして身体がぽかぽかと温くなった。
「どれ、見せてごらん」
別の子供がやって来た。ぼくの主人は、小さな掌をひらいた。すると相手が大きな声を出した。
「まあ、きたないねじ釘ね。その青いものは毒なのよ。そんなものを持っていると手が腐《くさ》るから捨てちゃいなさい」
「まあ……」
ぼくは、ぽいと捨てられ
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