かった。全身《ぜんしん》は艶《つや》をうしない、変に黄色くなっていた。
埃と一緒に、ぼくは掃き出された。そして放送所の後庭《あとにわ》に掘ってあるごみ捨て場の方へ持っていかれた。いろんなきたないものと一緒に、じめじめした穴の中に、ぼくは悲惨《ひさん》な日を送るようになった。身体はだんだんと錆《さび》て来た。青い緑青《ろくしょう》がふきだした。ぼくは自分の身体を見るのがもういやになった。
思えば、ぼくほど不幸な者はない。こんな不幸に生れついた者が、またとこの世にあるだろうか。ぼくを生んだ人間が恨《うら》めしい。もっと気をつけて旋盤《せんばん》を使ってくれればよかったんだ。
しかしぼくも途中でちょっぴり幸福を味わったことがあった。それはあの若い職工さんが、くだらない話に夢中になって、僕を放送機の孔《あな》に取付けてくれたからだ。あれから、この放送所へ来て、試験が行われている間までは、ぼくはたしかに幸福であったといえる。
だが、今から考えてみると、それは間違った幸福だった。元々あの若い職工さんが、誤《あやま》ってぼくを放送機にとりつけたのであった。だからぼくは当然今のようなみじめな境
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