鳴るたびに、ぼくの身体は穴からそろそろと抜けていくのであった。
「おい、ねじが抜けるよ。誰か来て留《と》めてくれ」
ぼくは人間に聞えない声で、一生けんめいに怒鳴《どな》った。
仲間のもくねじたちは、きっとぼくの悲鳴を聞きつけたにちがいない。しかし、彼等の力ではどうすることも出来ないのだ。
ガーン、ガーン、ガーン。
呀《あ》っという間に、ぼくは穴からすっぽりと抜けてしまった。そして小さい声をたてて、コンクリートの床に転《ころ》がった。頭の角《かど》をいやというほどぶっつけた。ああ万事休す!
ぼくは、又もや大きな悲しみの淵《ふち》に沈んだ。床から機械の元の穴まではずいぶんはるかの上だ、翼《つばさ》ない身は、下からとびあがっていくことも出来ない。
悲しみの中にも、ぼくはまだ少しばかりの希望を抱《いだ》いていた。
それは誰かがぼくの傍《そば》を通りかかって、ぼくが転がっていることに気がつくのだ。おや、こんなところにねじが落ちている。一体どこのねじが抜けたんだろうといって、その人が親切に、ぼくの入るべき元の穴を探してくれれば、ぼくはたいへん幸福になれるのであった。どうか、誰か技師さ
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