のせられ、寒い田舎を搬んでいかれた。
 そして遂に放送所についた。
 ぼくの取付けられている機械は、函から出された。そこには多勢の技師が待っていた。
「ああよかった。これで安心だ。間に合うかどうかと思って、ずいぶん心配したなあ」
 その中の一等|年齢《とし》をとった人が、そういって一同の顔を見廻した。
 それからぼくの機械は、多勢の肩に担《かつ》がれ、二階の機械室まで持っていかれた。
 この機械を据えつける基礎はもうちゃんと出来ていた。機械はその上に載《の》せられた。うまくボルトの中に嵌《はま》らないらしく、盛んにハンマーの音がかんかん鳴った。
 その震動は、ぼくのところまでもきびしく響いてきた。
「おや、これはいけないぞ!」
 ぼくは気がついた。たいへんなことが起りかけた。ぼくの身体が、穴から抜けそうである。
 あんまりがんがんやるからいけないのである。基礎がちゃんとうまく出来ていればよいのに、それが寸法《すんぽう》どおりいっていないものだから、ハンマーをがんがんふるわなければならないのだ。それは全くよけいな心配をぼくにかける。いや今となっては、単なる心配ではない。ハンマーがガーンと
前へ 次へ
全18ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング