う。ああ、きました。ヒマラヤのいただきです。しずかに着陸します」
博士のいったとおり、樽ロケット艇は気持よく、ゆっくりと着陸した。
「外へでるのですか」
「いや、外はなかなか寒い。今でも氷点下三十度ぐらいあります。蠅のテレビ劇は、この樽の中で見られます。この器械がそれを受けてこの四角い幕に劇をうつします。また蠅のいうことばを日本語になおしてだします」
「蠅のことばが、日本語になるんですの。そんなことができるんですか」
「できます。ものをいうとき、何をいうか、まず自分が心の中で考えます。考えるということ、脳のはたらきです。脳がはたらくと、一種の電波をだします。その電波を増幅《ぞうふく》して放送します。それを受信して、復語器《ふくごき》を使って日本語にも英語にも、好きなことばになおします。わかりましたか」
「わかったようでもあり、わからないようでもあり」と東助は首をふって「それより早く、その蠅の劇を見せて下さい。いや見せて聞かせて下さい。その方が早わかりがします」
「よろしい。すぐ見せます。あなたがた、椅子《いす》をこの前において腰かける、よろしいです」
そういって博士は、後向きになっ
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