て、蠅の脳波を受信するテレビ受信機のスイッチを入れ、たくさんの目盛盤《ダイヤル》をひとつずつまわしはじめた。
すると、四角い映写幕《えいしゃまく》に光がさして、ぼんやりした形があらわれて、ゆらゆらとゆれ、それからかすかなしゃがれた声が高声器の中からとびだした。
「何かでましたね。しかし何だかはっきりしませんね」
東助はいった。ヒトミも前へのりだす。
「今もうすこしで、はっきりします。お待ち下さい」
なるほど、そのとおりだった。間もなく急に画面がはっきりし、くさったかぼちゃの上に五六ぴきの蠅がたかっているところがうつりだした。
と、声も又はっきりしてきた。羽根《はね》の音がぶんぶん、くちばしから、かぼちゃの汁をすう音がぴちゃぴちゃと、伴奏のように聞えるなかに、蠅たちは、しきりにおしゃべりをしている。――
「アナウンスをいたします。これは『原子弾戦争の果《はて》』の第二幕です。あまいかぼちゃ酒がたらふくのめる、ごみ箱酒場で、大学教授たちが雑談に花を咲かしています」
「とにかく人類は横暴《おうぼう》である。かれらの数は、せいぜい十五億人ぐらいだ。この地球の上では、人類は象と鯨につづ
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