士は操縦席に腰をおちつけ、しきりに計器を見ながら操縦|桿《かん》をあやつっている。――この樽ロケット艇は、どこを目ざして飛んでいるのであろうか。
「ポーデル先生。こんどは、どのようなふしぎな国へ連れていって下さるのですか」
 東助は、うしろから博士に声をかけた。
「これからわしが案内しようという先は、ちょっとかわった人物なんでねえ。君たちは気持わるがって、もう帰ろうといいだすかもしれんよ」
「大丈夫ですよ。ぼくは、いつもこわいものが見たくて、探しまわっているんですよ」
「あたしだって、こわいもの平気よ。ポーデル先生、そのかわった人物というのは一つ目|小僧《こぞう》ですか、それともろくろッ首ですか」
「うわはは、二人とも気の強いことをいうわい。いや、一つ目小僧やろくろッ首なのではない。また幽霊でもない。それはたしかに生きている人物なんだ。彼はすばらしく頭のいい学者でのう、大学教授といえども彼の専門の学問についてはかなわない。かなわないどころか、さっぱり歯が立たないのじゃ」
「先生、その方はどんな学問を専攻していられるんですか」
「オプティックス――つまり光学、ひかりの学問なんだ。光の反射
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