とか、光の屈折《くっせつ》とか、光の吸収とか、そういう学問の最高権威だ」
「じゃあ、あたり前の学問ですわ。別にかわっていないと思いますわ」
「いや、大いにかわっている。それは君たちが実際ケンプ君――ドクター・ケンプというのが彼の名前さ。そのドクター・ケンプにじっさい会ってみりゃ、ただちにわかる。一目見れば分るのだ」
「ドクター・ケンプですね。はてな、その名前ならどこかで聞いたような気がするが……」
と、東助は考えこんだが、すぐには思い出せなかった。
「おお、この下だ。急降下するよ。目がまわるよ」
博士の声につづいて、艇《てい》はがたんと下へ落ちはじめた。目がまわる。
「もういいよ。外へでようや」
博士の声に、われにかえった二人だった。しずかだ。気持もぬぐったようになった。そこで一同は、例の非ユークリッドの空間に通ずる扉を開き、外へでた。
目の前に、古ぼけた洋館が建っていた。ペンキははげちょろけで、のきはかたむいていた。窓という窓には、かっこうの悪い鎧戸《よろいど》がしまっていて、あいた窓はない。あき家なのかしらん。いや、そうではない。煙突から黒い煙がでている。中で石炭をストーブ
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