吸をしているようであった。
 と、いつの間にか蔓草《つるくさ》が地をはってしのびよっていた。ヒトミはびっくりして、悲鳴をあげた。そのときはもうおそかった。ヒトミの腰から下は、蔓草のためにぐるぐるまきになってしまった。そしてその蔓草の先が、蛇のように鎌首《かまくび》をあげてヒトミの肩へはいあがった。
「なにをするんだ。こいつ……」
 と、東助はヒトミを助けるつもりで蔓草とたたかった。しかし彼はかんたんに蔓草にまかれてしまった。二分間とかからないうちに東助は、蔓草のためぐるぐるまきにされてしまった。
 ヒトミも東助も、悲鳴《ひめい》をあげるばかりであったが、そのうちに、二人のまわりは草と木とでとりまかれ、日光もさえぎられてしまった。密林の中にとじこめられたんだ。いや、その密林は緑色をした化物どものあつまりで、二人のまわりにおどりまわっている。
「た、助けてくれ……」
「助けて下さい。ポーデル先生」
「はっはっはっ。ほんとうに悲鳴をあげましたね。助けてあげましょう。しかし分ったでしょう。植物も動くということを。そして地球は動物の世界だというよりも、むしろ植物の世界だということを、植物にも感覚
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