る、よろしいです」
博士のことばが切れると同時にとこからともなく、へんな音響がきこえはじめた。それは奇妙《きみょう》な音色をあげつつ、かわっていった。と、二人は俄《にわか》に胸《むな》さきがわるくなって、はきそうになった。
が、間もなくそれは消えた。いやな音も消えた。震動もなくなった。博士がのっそりと操縦席から立上った。
「いよいよ、あの国へきました。これから下りていくのですが、その前に、私たちは特別の注射をいたします。この注射をしていかないと、おもしろいもの見られましぇん。腕をおだし下さい」
博士の手に、いつの間にか注射針がにぎられていた。
もうここまできては、博士のいうことをきくしかないので、東助もヒトミに目くばせして、注射をしてもらった。それはべつに痛くもかゆくもない注射だった。気分も大してかわらなかった。ただなんとなく気がのびのびして前よりは、いい気持だった。
「それでは、こっちからでましょう」
博士は先へ立って、戸を開いた。
直径二メートルほどの大きな円形の戸口があいていた。外はくらくてみえない。
博士に手をひかれて、東助とヒトミとは、ワン、ツー、スリーで外へと
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