けて見れば、ひとりでによくわかるといった。
 東助とヒトミとは、向こうへいきつくより前に、すこしでもその国がどんなところであるか知りたかった。そして博士に、いくどもねだった。
 博士は怒りもせず、ますます上きげんに見えた。そしてやっとパイプのすきまから、すこしばかりしゃべった。
「世界には、だれが住んでいますか」
「世界にですか。人間が住んでいます」
 博士の質問に、東助がこたえた。
「人間だけですか。蟻はどうですか。桜の木はどうですか」
「ああそうか。さっきの答を訂正します。世界にはたくさんの動物が住んでいます。人間もふくめて動物の世界です」
 東助は、ヒトミをふりかえって、この答は正しいだろうと、目できいた。ヒトミはうなずいた。
「そうでしょうか」と博士はいった。
「では、もう一つききます。地球の上でうごきまわっているのは何ですか」
 まるで「話の泉」のようであった。
「それは動物です。人間や馬や鳥や魚や、それから甲《かぶと》むしや蝶々やみみずや……みんな動物です」
 これはヒトミが答えた。
「その外ありましぇんか」
「動物の外、うごいているものはありません。動物とは、動くものと書
前へ 次へ
全126ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング