いい機嫌《きげん》の様子で、立ち上ってロッセ氏の黒い手を握った。
 ロッセ氏の面上《めんじょう》には、いたく感激の色が現れた。
「だが、ロッセ君。そんなに初速の早い電気砲をこしらえて、どうするつもりなんかね」
「これはしたり、そのような御たずねでは恐れ入ります。初速の大きいことは、すなわち射程《しゃてい》が長いことである。しからば、われは敵の砲兵陣地《ほうへいじんち》乃至《ないし》は軍艦の射程外にあって、敵を砲撃することが出来るのです。こんなことは常識だと思いますが……」
 と、ロッセ氏は、羞《はじ》らいながら応《こた》えた。金博士からメンタルテストをされたように感じたからであろう。
「そういう考えじゃから、命中率はだんだん低下し、砲弾代などが、やたらにかかるのじゃ。射程には、自《おのずか》ら限度がある。ただ砲弾を遠方へ飛ばすだけなら、射程をいくらでも伸ばし得られるが、砲門附近の風速《ふうそく》と、弾着地点《だんちゃくちてん》附近の風速とを考えてみても、かなりちがうのである。射程長ければ、命中率わろしである。そうではないか」
 金博士は、鉛筆を握って、紙のうえに、しきりに弾道曲線《だん
前へ 次へ
全23ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング