どうきょくせん》を描きつつ喋《しゃべ》る。
「ですが、金博士。僕はぜひともいい大砲を作りたいと思って、そのような初速の大きい電気砲を設計したのです。一発撃ってみて、命中しなければ、二発目、三発目と、修整《しゅうせい》を加えていきます。十発のうち、二発でも一発でも命中すれば、しめたものです」
「そういう公算的《こうさんてき》射撃作戦は、どうも感心できないねえ。なぜ、そんなに焦《あ》せるのであるか。もっと落着いて、命中しやすい方針をとってはどうか。ロッセ君、あなたの話を聞いていると、聞いているわしまで、なんだかいらいらしてくる。それでは、戦闘に勝てない。ロッセ君、あなたは日本人だというけれども、あなたの電気砲設計の方針は、日本人的ではないですぞ。それとも、近代の日本人は、そんなにいらいらして来たのかな」
 色眼鏡《いろめがね》の底に、金博士の眼が光る。
 ロッセ氏は、次第《しだい》に沈痛《ちんつう》な表情に移っていって、しきりに唇を噛《か》んでいる。私は、それをとりなそうにも、いうべき言葉を知らなかった。――ロッセ氏が、或る秘《ひ》め事《ごと》を、ここで告白するのでなければ、どうにもならな
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