、電気砲学の権威です」と、私は紹介の労をとって、「ロッセ氏は、三ヶ月程前に、初速《しょそく》が一万メートルを出す電気砲の設計を完成されたのですが、残念にも、今日本では、それを引受けて作ってくれるところがないために、すっかりくさってしまわれたんです。それでこの上海《シャンハイ》へ、憂鬱《ゆううつ》な胸を抱いて、なにか気分をほぐすものはないかと、遊びに来られたのですが、私は、博士を御紹介するのがよいと思ったので、実は、ロッセ氏には事前《じぜん》に何にも申さないで、とつぜんここへお連れしたわけですから、どうぞ話相手になってあげていただきたい」
私が思いがけなくすっかり底を割ってしまったので、ロッセ氏は、私の話の途中、いくたびも仰天《ぎょうてん》して、私の袖《そで》をひいて、話をやめさせようとしたほどであった。
博士は、かるくうなずいていたが、私の話を聞き終ると、
「それは、くさるのも無理ではない」
と、同情の言葉を洩《も》らし、
「わしは、あなたがロッセ氏であることは、今綿貫君の紹介で初めて知ったわけだが、しかしあなたのことは、電気砲の論文を読んで、前から知っていたよ」
と、たいへん
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