ところへも届く」
「それはそうだね」
「あの金博士の意地悪《いじわる》め。僕は、英艦隊を一挙《いっきょ》にして撃沈《げきちん》したいため、うまうまと博士の見え透《す》いた悪戯《いたずら》に乗せられてしまったんだ。ちくしょう、ひどいことをしやがる」
「……」
ロッセ氏は、天に向って、しきりに博士の名を呪いながら、停っては歩き、そして又停っては歩きした。よほど口惜《くや》しそうだった。
私は、博士のことを、そんな人物だとは思わないが、ロッセ氏から、のろのろ砲弾についての討論を聞いているうちに、だんだんと氏のいうところも尤《もっとも》だと思うようになった。
「なるほど、反対条件だねえ」
「博士よ、豚に喰《く》われて死んでしまえ」
「まあ、そういうな。背後《うしろ》をふりかえってから、ものをいって貰おうかい」
ふしぎな声が、とつぜん、私たちのうしろから聞えたので、私ははっと思った。
「誰だ?」
「あっ!」
生れてからこの方、私はこんなに愕《おどろ》いたことは初めてだった。悲鳴をあげると共に、私は愕きのあまり、鋪道《ほどう》のうえに、腰をぬかしてしまった。なぜといって、私が振り返ったとき
前へ
次へ
全23ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング