も、ユダヤ系というわけではない。博士は曰《いわ》く、わしは国籍こそ無けれ、あくまで東洋人だといっている」
「で、博士は一体、毎日どんなことをやっているのか」
「博士は、なんでも、気に入った科学をとりあげて、どんどん研究を進めている。今は、宇宙線と重力《じゅうりょく》との関係を研究しているが、今までにも、たくさんの発明がある。その中で、かなり古臭《ふるくさ》くなった発明を、方々の国に売って、莫大《ばくだい》な金を得ている。博士の資産《しさん》は、何百億円だか見当がつかない。が、それよりも驚異に値するのは、博士の自主的研究は独得なる発展を遂《と》げ、今世界中で一等科学の進んだアメリカや、次位《じい》のドイツなどに較《くら》べると、少くとも四五十年先に進んでいると、或る学者が高く評価している。だから、博士は、科学に関しては、世界の人間宝庫《にんげんほうこ》であるともいわれている」
私が最大級の讃辞《さんじ》を博士に捧《ささ》げていると、ロッセ氏は、そうかそうかと、ペルシャ猫《ねこ》のように澄《す》んだ瞳《ひとみ》をくるくるうごかして、しきりに感服《かんぷく》の面持《おももち》だった。
「だ
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