は御希望のとおり美人かもしれません」
すると伯爵は顔を赭《あか》くし、
「いや、美人不美人を問題にしているのではありません。あの名画を、君が賊から取戻す見込みがあるかどうか、そのところを知りたいのです」
と、ごま化した。
「さあ、そのことですが、今まで調べて分ったところを綜合して考えてみますのに……」
と袋探偵は鼻をくすんくすんと小犬の様《よう》に鳴らし、それから突然胸を張って深呼吸を一つすると「……これは実に変った事件ですぞ。これまでの世界犯罪史の中に、全然先例を見ない新鮮にして奇怪なる事件ですな。ですから警察なんかの手に委《ゆだ》ねておいては、いつまで経っても犯人を探し出してくれんです。実に記録的なる怪々事件ですな」
袋探偵は、急にこの事件の重大性を力説し始めたのである。
「それはたいへんだ。すると犯人は猛烈に凄い奴ですね。少くともルパン級。いや、もっと上のスーパー・ルパン級の悪人ですか。困ったなあ、あの生命にも替えがたい名画『カルタを取る人』は遂に永遠に僕の手に戻りませんかねえ」
「そうかもしれませんが、そうでないかもしれません。まあしばらく、私にこの事件をお委せ下さい。
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