もちろんそうしました。そしてたしかにそのときは本物の『カルタを取る人』の画が額縁にかかっていたのです」
 伯爵は、探偵に詳しく前夜から事件を発見した朝までのことを説明した。
 それによって、探偵は家中を調べ、雇人について正したが、その結果分ったことは、伯爵は嘘をついているのではない、雇人たちもこの犯罪に関係していない、賊が忍びこんだところは調理室の窓からであって、そこには有り得べからざるところに犯人のゴム靴の足跡がかすかに残り、また棚のところには犯人の手袋の跡が残っていた。そして犯人は二人組らしく、そのうちの一人は女であると推定され、而《しか》も髪の毛がやや赤いところから、色は白く、髪をポケット顕微鏡で観察し、試験薬品で処理した結果、年齢は四十歳に近い大年増の女である。これが袋探偵がその場で知り得たところの諸点だった。
「賊は二人組で、そのうちの一人は大年増の女だというんですか。しかも色の白い女で、美人なんですか」
 伯爵は、探偵からそれを聞かされると、そういって目を丸くした。
「ちょっと待っていただきます。私は今、美人とは申しませんでした。もっとも、不美人だとも断定できません。あるい
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